みんとの絵本箱

有鹿谷(あるかだに)の霊石(れいせき)

この絵は、我が絵描き仲間のおいちゃんが、ワン・ハートさんのご依頼をうけて描いてくださったものです。
とてもすばらしい作品ですので、ここにupしておきますね。



有鹿谷01



有鹿郷五カ村(あるかごうごかそん)といわれた
上郷(かみごう)、河原口、中新田、社家(しゃけ)、中野の農業用水は、
その源が、相模原市磯部にある勝坂遺跡(かつさかいせき)近くの谷にあります。

この勝坂の水にまつわるお話です。
有鹿谷02



今から約四百年前のことです。 日照りが続くある年のこと。

村人1 「雨がちっとも降らねぇな。」

村人2 「田んぼも畑もカラカラだ。」

村人1 「耕しても種を蒔いても作物はすぐ枯れてしまう。」

村人2 「これじゃあ飢え死にだ。」

村人1 「こうなったら住職さんに拝んでもらうべえ。」
有鹿谷03



総持院(そうじいん)の住職 慶雄(けいゆう)は村人が苦しんでいることに心を痛めておりました。

その夜、

神霊 「良い水のありかを教えよう。有鹿池(あるかいけ)に沈んでいる輝く石を探し、
    明日の朝境内から飛び立つ金色の鳥のあとを追え。
    そして源をみつけたら、その石を置いて来るが良い。」

と不思議な夢を見ました。
有鹿谷04



お告げどおり有鹿池を探すと、何やら暗い池の底にひときわ光り輝く石が見えました。

慶雄 「おお、あった。この石に違いない。」

慶雄は喜び勇んでその輝く石を拾い上げ、大事に大事にかかえました。
有鹿谷05



早朝、境内から金色の鳥が飛び立つと、見失わないように必死に後を追いかけました。

朝もやにけむる中、金色に光った鳥は手招くように飛び続け、北へ北へと導きました。
有鹿谷06



行けども行けども山は険しくなるばかり。

修行で鍛えたとは言え、さすがの若い慶雄も

慶雄 「はぁ、はぁ。石は重いし、心臓は張り裂けそうだ。
    村人の為、何が何でも水のありかを見つけるまでは頑張らなくては。
    はぁあ、ふぅう。」
有鹿谷07
やがて深い森を抜け、うっそうとした湿地帯になったころ、金色の鳥は、磯部村勝坂(いそべむらかつさか)の集落で大きく輪を描くように回ると、スッと姿を消してしまいました。

慶雄の荒々しい息づかいと足を引きずる音だけが、静まりかえった辺りに響いていました。



どれくらい歩いたでしょうか。

慶雄 「何だ、この音は。 もしかして、これは。」

慶雄は、汗と泥にまみれた体を奮い立たせ、音のする方に駆け寄りました。

慶雄 「水、水だぁあ。 やっと見つけたぞ。」

そこには洞窟があり、なんと清水がこんこんと湧き出ているではありませんか。
有鹿谷08



慶雄 「おお、有難い。お告げの湧き水の所にやっとたどり着いた。」

と喜び、大事に抱えてきた輝く石を湧き水の側に大切に置きました。
有鹿谷09



するとどうでしょう。

洞窟から湧き出た水は、あれよあれよと勢い良く鳩川(はとがわ)に流れ落ちて行きました。
有鹿谷10



村人2 「水だ。水が流れてきたぞ。」

村人1 「なんとありがたいことよ。」

村人2 「日照りが続いても、これだけ水があれば稲も枯れずにすむべえ。」

こうして鳩川の川下に近い上郷、河原口、中新田、社家、中野の田んぼの水は
満たされるようになりました。
有鹿谷11




一方、洞窟近くの勝坂のお年寄りの話では、その光り輝く石は それはそれはきれいな玉石ですが、
不思議なことに子供たちがいたずらしてそれを動かしても、
いつの間にか必ず元の位置に戻っていたということです。
有鹿谷12
ある時、いたずら小僧兄弟が、

弟 「お兄ちゃん、どうしてこの石、元に戻っちゃうの。」

兄 「うーん。それが不思議なんだよな。」

弟 「動かないように出来ないの。」

兄 「そうだ。よい考えを思いついたぞ。」

弟 「えっ。なぁに、早くおしえて。」

兄 「縄でしばって動かないようにするんだ。」

弟 「ぐるぐる巻きにしたから、もう元に戻らないよね。」

兄弟は面白がってぐるぐる巻きにした不思議な石をほかに移して、そのまま山に遊びに行ってしまいました。


遊び疲れてお腹を空かせて帰ってみると、村の人が家の前に集まって大騒ぎです。

お父さん 「大変だ。大きな白蛇が座敷いっぱいにとぐろを巻いている。」

おじいさん 「赤い舌をペロンと出して睨んでいるぞ。」

お母さん 「恐ろしくて家の中にいられないわ。」

おじいさん 「白蛇は水の神様のつかいだぞ。誰だ。怒らせたのは。」

兄弟はお腹が空いたどころではありません。
有鹿谷13




お父さん 「お前たちだったのか。あの不思議な石にいたずらをしたのは。」

お母さん 「水の神様を怒らせて湧き水が枯れたら、よその村の人も困るのよ。」

兄弟 「神様ごめんなさい。悪戯をして悪うございました。」

兄弟が謝っても、家の人が謝っても、蛇は許してくれません。
有鹿谷14



おじいさん 「こうなったら蛇が家から出てくれるよう、
       大山阿夫利神社(おおやまあぶりじんじゃ)の神主に来ていただこう。」

 お父さん 「そうだ。そうしよう。お詫びの祝詞を上げていただこう。」

こうして白蛇の大蛇に、ようやく洞窟へ戻っていただいたということです。
有鹿谷15



村人は湧き水の側に小さな祠を奉りました。

有鹿神社の奥の宮、有鹿大明神です。

今でも湧き水の側には鹿の彫刻がほどこされた小さな祠があり、湧き水を守っています。
有鹿谷16



その後、湧き水の出る洞窟のあたりを有鹿谷(あるかだに)と名づけ、有鹿郷五カ村の水の源としました。

貴重な水が確保されることになり、鳩川に沿って水田が広がり、農民の生活に欠かせないものになりました。

人々は感謝して、それからは毎年四月八日のお祭りには、有鹿神社の神輿(みこし)がこの有鹿谷まで行き、
六月十四日まで、この輝く不思議な石を洞窟に置いておくことがしきたりとなりました。

このしきたりは「有鹿様の水もらい(水引祭)と言われて、現在も行われています。
有鹿谷17



有鹿谷18
参考文献 「えびなむかしばなし第一集」より


神奈川 県央の民話・昔ばなし 朗読劇集 ワンハートボイス脚色編
  1. 2012/05/04(金) 11:11:04|
  2. 民話・昔話・エッセイetc.

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「ちょっとのんびり おくつろぎの絵」(みんとふぁくとり〜)の別館です。

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