みんとの絵本箱

ケン太とヨッチンと牛

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ケン太は小学校3年生、ヨッチンは1年生の兄弟です。

ケン太の家族は、お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさんと牛が二頭です。

牛も家族と同じに大事にされています。

ケン太の家は農家で、冬の間をのぞいて一年中忙しく朝から夕方遅くまで働いています。

朝は、日の出前には、お父さんとお母さんは、畑にでかけます。

おじいさんとおばあさんは家の留守番をします。
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おばあさんは、ケン太とヨッチンを起こし、朝ごはんを食べさせて学校に行かせます。

おばあさん  「ケン太、ヨッチン、忘れ物はねえか、よくたしかめてな。」

ふたり  「だいじょうぶだ、行ってきます。」
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おばあさんは食事の後片付けやら洗濯、おじいさんは家のまわりの草とりやら、忙しく働いています。
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どの家の子どもたちも、学校から帰ってくると、家の手伝いをします。
ケン太も誕生日に、お父さんから草刈鎌を買ってもらって、毎日、牛に食べさせる草を刈ります。

ケン太 「おらの鎌だ!」

ケン太は、ちょっぴり大人になった気分です。
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ケン太の家の畑は、今の相模が丘あたりの芝原にありました。

牛に引かせた車に乗ったお父さんとお母さんは、朝が早いので、牛車にゆられながら、うとうとしていますが、牛は畑を知っていて、もくもくと畑に向かって歩いて行きます。

畑につくと、車から牛を離してやり、近くの木に綱を長くして牛が自由に動けるようにつなぎます。牛はのんびりと草を食べたり、ねそべったりして夕方まですごすのです。

二人が畑仕事に精を出しているうちに、お日さまが頭の上にくると、ちょうどお昼時です。持って来たお弁当をひろげ、食べ終わると木かげでひと休み、横になって昼寝をしたりします。
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さて、学校ではケン太は算数の時間です。
先生の姿が見えないと、教室はおしゃべりでにぎやかです。

先生が教室に入って来ました。
急に教室の中がシーンとなって、みんなサッと自分の席にもどりました。
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先生 「みんな席についたね。それでは、問題を出します。

    親せきの人が、牛を二頭連れてきました。近所の人が三頭連れてきました。

    牛は全部で何頭ですか?」
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ケン太が手をあげて、いきおいよく立ち上がりました。

ケン太 「はい、七頭です。」

友達 「えっ、七頭?」

指を折って数えてる友だちもいます。
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先生 「ケン太、よく考えなさい。もう一度言うよ。
    親せきの人が二頭、近所の人が三頭連れてきたんだよ。合わせて何頭になるんだ?
    七頭じゃあないだろう。よく考えてごらん。」

ケン太 「二頭と三頭で五頭だけど、おらんちに牛が二頭いるから七頭になるよ。」

友達1 「ケン太、自分の家の牛も足したのか。おもしれえなあ。」

友達2 「本当だよな。」

友達3 「ケン太はいつも変なことを言うよね。」

先生 「はい。静かに。ここではケン太ん家の牛は加えないよ。答えはみんな分かったね。
    それではつぎの問題です。」
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先生がもう一つ問題を出しました。

先生 「牛が1.5キロメートル走るのに十五分かかります。
    3キロメートル走るには何分かかるでしょう。」

ケン太 「その牛、だれが走らせるんですか。
     お父さんが追うと早いし、おらが追うとおそいよ。」

友達2 「おらん家もそうだよな。」

友達1 「おらが追うと早いよ。」

先生 「ケン太、今は算数の時間なんだから、数字だけで考えなさい。
    余計なことを考えなくていい。」

ケン太 「はあい。」
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夕方になると、お父さんとお母さんは、畑仕事の道具を片付け、朝、ここにきた時と同じように牛に車を引かせて帰ります。

日暮れが早い秋になると、家に着くころには、もう暗くなっていることもあります。
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家に着くと、牛の身体をふいてやり、牛小屋に入れて、まぐさや水をやって休ませます。

なにしろ家中のものが皆で食べるものをつくっているのだから、祭日も休日もありません。

でも畑仕事をやっていると、いろいろなものが育つので楽しいものです。
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ある日の夕方、村長さんが、家にやって来ました。

村長 「おう、父ちゃんいるかい。」

ヨッチン 「いるよ。牛小屋にいるよ。牛に餌をやっていると思うよ。」

村長 「そうかい。そんなら、牛小屋に行ってみらあ!」

ヨッチン 「餌をやっているのが、父ちゃんだよ。餌を食べているのが牛だよ。
      よく似ているから間違わないようにね。
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村長さんは首をかしげ、ひとり言をいいながら牛小屋の方へ歩いて行きました。
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参考文献
●座間むかしばなし(座間教育委員会編)
●座間ばあちゃんの遠めがね(古市静子 著)杉並けやき出版


神奈川 県央の民話・昔ばなし 朗読劇集 ワンハートボイス脚色編

このイラストは、ワンハートボイスさんのご依頼で描いたものです。
  1. 2012/06/12(火) 16:06:54|
  2. 民話・昔話・エッセイetc.

《みんとの絵本箱》

「ちょっとのんびり おくつろぎの絵」(みんとふぁくとり〜)の別館です。

みんと

Author:みんと
ここには、ストーリーもの・お話しモノを集めてみました。

(1枚ものイラストは「ちょっとのんびり〜」にあります)。

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