みんとの絵本箱

宗達稲荷(そうたついなり)

宗達-01
厚木市の上荻野に、弘法大師によって開かれた、華厳山(けごんざん)松石寺(しょうせきじ)という
たいへんりっぱなお寺があります。
このお寺に『宗達稲荷(そうたついなり)』というお稲荷さんがありますが、なぜまつられるようになったのか、ごぞんじですか。

『宗達稲荷』には、こんなお話が伝えられています。



宗達-02
今から550年ほど前、この松石寺に白陽(はくよう)という徳の高い和尚さんが住んでおられました。
そして、この白陽和尚さんの弟子になって、修行をしたいという若いお坊さんが、毎日のようにたずねてきました。



境内には、朝早くから、修行を許された多くの弟子たちが読む、
お経の声や木魚、鐘の音などがひびき渡っていました。
宗達-03



そんなある日のこと、一人の小坊主がたずねてきました。
宗達-04
小坊主 「和尚さま、私を弟子にしてください。
     一生懸命修行をして、りっぱなお坊さんになりたいと思っています。」

和尚  「小さいのに感心なことをいう。しかし、修行というものは、厳しいものだぞ。
     その小さなからだでつとまるかな。」

小坊主 「つらいことがあることは覚悟しています。どうか弟子にしてください。

和尚  「それほどいうなら、厳しい修行じゃが、しっかりやりなさい。」

和尚さんは、小坊主を弟子にすることにし、数珠を与えました。



願いのかなった小坊主は、次の日から毎朝、だれよりも早く暗いうちに起き、本堂のそうきんがけや庭のそうじをしたり、和尚さんや兄弟子の身の回りの世話をしながら、お経にせいを出し、夜遅くまで修行にはげみました。
宗達-05
兄弟子たちは、

兄弟子1 「あいつが来てから、掃除などよくやってくれるので、すっかり楽になったなぁ。
      修行に専念できるので、ほんとうに助かるよ。」

兄弟子2 「あの小さなからだでよくがんばるね。おかげで、少し朝寝坊もできるし、ありがたいね。」

兄弟子1 「ほんとうにいい弟弟子が来てくれた。」

と話し合っていました。


そして何年か経ち、小坊主は、りっぱな若者に成長しました。

和尚さんは、熱心に修行する姿や兄弟子たちの評判を聞いて、小坊主を一人前のお坊さんと認め、「宗達」という名前をつけました。
宗達-06



一人前のお坊さんとなった宗達は、ある日、厚木村の名主さんのところへお使いを頼まれました。
松石寺に来てはじめての外出です。
足取りも軽く、今まで見たことのない景色を見渡しながらの楽しい外出です。
宗達-07




用事も無事にすませ、ほっとした帰り道、のどもかわき少し疲れたので、小鮎橋(こあゆばし)のたもとの土手で休むことにしました。

宗達 「やれやれ無事に使いもすませたし、天気もいいし、まわりの景色もすばらしいし、ひと休みしていこうか。」
宗達-08
暖かいポカポカした日差しを背に受け、景色を眺めていると、日ごろの疲れで、眠気が襲ってきました。

眠ってはいけないと思いつつ、ついウトウトと眠ってしまいました。



村人1 「あんなところで、お坊さんが寝てるだぁ。」

村人2 「あれ、お尻からしっぽが出てねえか。」

村人1・3 「なんだあ。なんだあ。」

村人1 「お坊さんがしっぽ出して寝てるだぁ。」

村人2 「きつねが、お坊さんに化けてるのではねえのかあ。」

村人3 「お寺さんにしらせなきゃ、きつねが坊さんの修行してるのか。」

村人1・2 「まさかそんな、ばかな、、、、、ハハハハ。」
そうたつ-09



ガヤガヤという人の声に、宗達は目を覚ましました。
そして、うっかりしっぽを出している自分の姿を見てまっさおになりました。
そうたつ-10
宗達 「しまった。きつねだというのを人間に見られてしまった。」

宗達は、恥ずかしさと捕まえられては大変と、あわててにげだしました。



村人1 「あんなにあわてて、どこ行くだぁ。」

村人2 「しっぽがでてるのを見られちゃったんだもの、そりゃあわてるさ。」

村人3 「やっぱりお寺へ帰るのかなあ。」

村人1 「さあどうかな、しっぽをだしてしまったからなあ。」

村人2 「お寺には帰れねえべえ。」
宗達-11



村人のそんな声をうしろに聞きながら、宗達は、走りに走りました。
お寺には戻れないので、山の中をさまよっていました。
ふと気がつくと、お寺の裏山に来ていました。
月の光の中に修行してきたお寺が見えます。

宗達は、急に悲しくなり涙が出てきました。
宗達-12



宗達 「コーン、コーン、コーン、コーン。」

きつねにかえってしまった宗達は、いつまでもいつまでも鳴き続けました。
そうたつ-13



和尚 「今夜は、ばかにきつねが鳴く。宗達は、まだ帰らぬのか。」

和尚さんは、宗達のことが心配で、床についても眠れません。
すると、障子のむこうに声がしました。
宗達-14
宗達 「和尚さま、ご心配をかけ申し訳ございません。もう、お寺に戻ることができなくなりました。
    ながらくお世話になりありがとうございました。」

和尚 「その声は宗達ではないか。いまごろまでなにをしておった。
    お寺に戻れないとはどういうことだ。」


宗達 「和尚さま、おゆるしください。わたしは、ほんとうはきつねでございます。
    今日、村の人にきつねの姿を見られてしまいました。
    村の人に知られた以上、もうお寺にはいられません。
    和尚さまに、ご迷惑がかかりますので、おいとまいたします。」

和尚 「宗達、まちなさい。これ、宗達。」
そうたつ-15
和尚さんが、あわてて宗達をひきとめようと、障子をあけると、もう宗達の姿はどこにもありませんでした。


和尚さんは、若い坊さんたちと一緒に、一晩中、山の中を捜しました。

そして、夜明けに、ころもを着たきつねのなきがらを見つけました。

宗達でした。
宗達-16



よく見ると、手はしっかりとあわされ、見なれた数珠が下がっていました。

その数珠こそ、宗達が和尚さんの弟子にしてもらい、修行をゆるされたときにもらった数珠だったのです。
そうたつ-17
和尚 「きつねの身でありながら、あんなによくつとめてくれたのに、かわいそうなことをしたのう。
    おおそうだ、きつねは、お稲荷さんのおつかいじゃ。
    『宗達稲荷』として、まつってやろうじゃないか。」


『宗達稲荷』は、松石寺の裏山にまつられ、お寺にお参りに来た人達は、必ずこの『宗達稲荷』にもお参りするようになりました。

今では、お使いに行く宗達の姿が、木の像にきざまれて、松石寺の本堂にまつられています。
宗達-18




宗達-19
参考文献
●甲州道、かみおぎの  中丸健夫著
●民話「松石寺の白ぎつね」
●あつぎのむかしむかし 厚木市教育研究所 刊行


神奈川 県央の民話・昔ばなし 朗読劇集 ワンハートボイス脚色編

このイラストは、ワンハートボイスさんのご依頼で描いたものです。
  1. 2012/05/26(土) 11:03:57|
  2. 民話・昔話・エッセイetc.

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「ちょっとのんびり おくつろぎの絵」(みんとふぁくとり〜)の別館です。

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