みんとの絵本箱

しっぽで油をぬすんだキツネ

oil-01.jpg



田舎には、現在の職業とは関係のない屋号で呼ばれる家がありますが、こうした屋号は、たいていその家の昔の職業からつけられた場合が多いようです。

大谷(おおや)には、[油屋(あぶらや)]という屋号で呼ばれる旧家があります。

この家は昔、ナタネやゴマを買い集めて油をしぼり、江戸の問屋へ送る油しぼり業を行っていました。

油屋にはたくさんの職人がいて、大きな仕事場からは何台ものしぼり機の音が毎日聞こえていました。
oil-02.jpg



店の片すみでは、地元の人たちのために油の小売りもしていました。

いつのころからか、日暮れになると決まって油を三合、買いに来る小坊主がいました。

頭を青々とそり、黒い腰ごりもをつけた一休さんのようなかわいい小坊主でしたが、どこから来るのか知っている者はいませんでした。
oil-003.jpg



おかみさん 「どこのお寺から来るのかしら、毎日お使い御苦労さま。小坊主さん偉いわね。」

小坊主 「おかみさん、こんばんは。和尚さんに頼まれてお使いにきました。油三合売ってください。」

小僧 「今日も油三合、いっぺんに買ってくれれば手間もかからないのに。面倒だな。」

おかみさん 「お客さんにそんな事、言ってはいけないよ。」

小僧 「へ〜い、すみません、おかみさん。」
oil-004.jpg



遊び遊び仕事をしたり、わざと時間をかけて仕事をすることを[油を売る]と言いますが、
このたとえどおり、油の量を計るのには、ゆっくり時間をかけなければなりません。

三合では一合枡で三回計らなければならず、時間がかかって仕方ないので、

小僧 「一升徳利でまとめて買いに来てくれないかなぁ。」

おかみさん 「また、同じ事言って、しょうがないね、小坊主さん許してくださいね。」
oil-05.jpg
小坊主 「一軒一軒家を回ってお経を唱え、一握りのお米を施してもらうのも修行なら、毎日三合の油を買いに通うのも修行だ、と和尚さんがおっしゃるもので、、、。」




小僧 「それなら、もっと明るいうちに来いよ。」

小坊主 「そうしたいのですが、私が臆病で夜道を怖がるので、これも修行だと、こうして日暮れ時に買い物を言いつけられるのです。」

申し訳なさそうに言うので、小僧はそれ以上何も言えませんでした。
そのうちに小坊主の気持ちがなんとなくわかり同情するようになってきました。
oil-06.jpg



その後も、この小坊主は相変わらず日暮れに油を買いに来ました。

おかみさん 「番頭さん、金庫のなかに木の葉が、何やら不思議だね、、、このところ売上金と油の量が合わなくなってきている様だが、良くしらべておくれでないか。」

番頭 「おかしいな計算ちがいか、油の量を多く計り過ぎているのかな。」

番頭もそれとなく気をつけて見ていましたが、あるとき、この小坊主が油を買いに来ているときに出会いました。
oil-07.jpg




番頭 「かわいい小坊主さんだな。」

小坊主 「こんばんは、油三合ください。」

小僧 「今日も油三合だね、いくら言っても変わらないね、、、困ったもんだ、
    少しまっておくれ、、、毎度あり、、、」
oil-003.jpg



小僧が油一合枡で三回、時間をかけて計っている間、番頭が小坊主の様子を見ていると、

番頭 「あれぇ おかしいな、変な格好で油桶に後ろ向きにすり寄って 何してるのかな」

なんと 腰ごろもの下から大きな尻尾を出し、その尻尾を陰になっている油桶に入れて、たっぷり油を吸い上げ、そ知らぬ顔で帰っていくではありませんか。
oil-08.jpg
番頭 「ぎょぎょ、、、これは、たまげた大変だ。どこの寺へ帰って行くか、つきとめてやる。」

小僧 「番頭さんは、急に飛び出して 何があったんだぁ。」

おかみさん 「この忙しいのに店をほっぽって 本当にこまったねぇ。」

小僧 「店が空っぽになってしまうよ。」



番頭がそっと跡をつけると、稲荷山へ抜ける細道を飛ぶように歩き、竹ヤブの入口でちらりと振り返ると、そのまま姿を消してしまいました。

番頭 「あれ、、、見うしなってしまった、足の速いやつだ。不思議だなぁ。」

番頭は、ハァハァしながら戻ってきました。
oil-09.jpg



おかみさん 「いったい何があったんだね。」

番頭 「かわいい小坊主と思ってたが 店に来るたび、とんでもない事を、尻をすり寄せ油を吸い上げていたんだ。」

おかみさん 「どうりで売り上げの計算が合わない訳だ。」

小僧 「おかしいと思った、悪い奴め。」
oil-08.jpg


この小坊主は、その後二度と油屋にはこなくなりましたが、番頭が少なくなった油桶の中を調べてみると、その底には、狐の毛がたくさん沈んでいたそうです。

oil-10.jpg

注)三合、、、約0.54リットル
  一升、、、約1.8リットル


oil-11.jpg
参考文献 「えびなむかしばなし第一集」より


神奈川 県央の民話・昔ばなし 朗読劇集 ワンハートボイス脚色編

このイラストは、ワンハートボイスさんのご依頼で描いたものです。
  1. 2012/04/21(土) 12:24:20|
  2. 民話・昔話・エッセイetc.

《みんとの絵本箱》

「ちょっとのんびり おくつろぎの絵」(みんとふぁくとり〜)の別館です。

みんと

Author:みんと
ここには、ストーリーもの・お話しモノを集めてみました。

(1枚ものイラストは「ちょっとのんびり〜」にあります)。

カテゴリ

もくじ (1)
アライグマとねずみのおはなし (4)
郵便バードのおはなし (3)
ネコの町のおはなし (12)
民話・昔話・エッセイetc. (11)
アヒルくんのおはなし (1)
スズメくんたちのお話し (4)
小さなお話 (2)
かじぇさんと作ったおはなし (2)
あいうえおさんと作ったおはなし (2)
KMさんと作ったおはなし (1)
未分類 (4)

最新記事

リンク

since2011.11.19~